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BS-TBS「SONG TO SOUL」:ぼくたちは、こんな音楽番組を見たかったんだ

みなさんは、音楽番組を見ているだろうか?

といっても、最近は、音楽番組自体が本当に少なくなってきた。

私が10代のころは、「ザ・ベストテン」、「ザ・トップテン」、「夜のヒットスタジオ」などという人気番組があった。このうち、「ベストテン」と「トップテン」はランキング形式の番組で、「ヒットスタジオ」はアイドルから演歌歌手まで幅広い層の歌手が出演する歌謡バラエティ番組だ。

「ベストテン」と「トップテン」なんて、両方ともランキング形式で曲を発表するスタイルだったため、当然、出演する歌手がカブっている。

それでも、毎週、両方の番組を見ていたなあ、あの頃は。飽きもせずに、よく見ていたもんだ。

ただ、「ベストテン」も「トップテン」も邦楽専門で、「ヒットスタジオ」は、たまに外人ミュージシャンが出演する程度。

だから、洋楽に関しては、やはり「ベストヒットUSA」が人気があった。そして、この「ベストヒットUSA」が放送されたことにより、日本では80年代洋楽が大ヒットしたのだ。

まさに、「ベストヒットUSA」は、日本での洋楽ブームの火付け役だと言っても過言ではない。

さらに、「ベストヒットUSA」が人気化した理由は、当時の音楽が、「聴く音楽」から「見る音楽」への転換点にあったこともある。

音楽を聴くだけならばラジオで十分だ。

しかし、当時は、マイケルジャクソンの「スリラー」に代表されるように、アーティストがミュージックビデオ制作に力を入れ始め、曲だけではなく、映像表現にも多額の投資をするようになった。

「スリラー」は、クソしょうもない歌詞だったけれど、マイケルやゾンビたちのメイク、ダンス、特殊効果、すべてが斬新な演出となっており、当時の一般的なミュージックビデオ製作費の10倍、1億円以上もの巨費を投じで撮影された傑作ビデオだった。

これ以降、音楽は「聴くだけのもの」から「聴くと同時に見るもの」に変わる。

当時のイギリスを代表するカルチャークラブ、デュラン・デュランなどニューロマンティクスを代表するバンドのミュージックビデオは、華やかで、おしゃれで、まるで映画のワンシーンを見ているかのようだった。

また、衝撃的だったのは、マドンナの「ライク・ア・バージン」だろう。エロチックなその映像は、当時中学生の私には、あまりにも刺激が強すぎた。

ヌードもないし、なんらエロの要素はない普通のミュージックビデオなんだが。

でも、あんなミュージックビデオを見たら、しばらく眠れない。なんせ、まだ中学生だったからね。

当時、「ベストヒットUSA」は、そんなミュージックビデオとともに曲を紹介したため、ラジオから洋楽ファンをごっそりと奪い取ってしまった。

その当時の洋楽は、「聴くだけの曲」から「聴くと同時に見る曲」へと変身を遂げていき、テレビでそのミュージックビデオを放送した「ベストヒットUSA」は、まさに絶好のタイミングで人気番組となったわけだ。

 

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「SONG TO SOUL」のひっそりとした登場

 

しかし、音楽番組が全盛だった80年代から、すでに30年以上が経過した。現在は、音楽番組自体がほとんどないし、CDすら売れていないという。

80年代あれだけ人気を誇った「ベストヒットUSA」も、今ではBSに引っ越して細々と営業を続けている程度だ。

「SONG TO SOUL」がいつ頃始まったのか覚えていないが、私が気づいたころには、すでにこの番組がなんとなく始まっていた。

今は音楽番組の人気が下火なため、鳴り物入りで始まるということでもないらしい。ましてや洋楽紹介の番組だからなおさらかもしれない。

だから、「SONG TO SOUL」も、目立たないように、ひっそりと、いつの間にか始まっていたような印象だ。

「SONG TO SOUL」は、今までの音楽番組とは違い、名曲と言われる1曲に焦点を当てて、その曲が誕生した理由、時代背景や、きっかけなどを、曲作りに携わった人々の証言を交えて解き明かしていく番組である。

 

意外に豪華な出演者と金のかかった取材ロケ

 

それゆえ、歌手本人がインタビューに出演することが多い。

最近でも、デュラン・デュラン、エンヤ、シャーリーン、リチャード・カーペンター、B.J.トーマス、アルバート・ハモンドなど、曲を歌った本人が出演している。

私はエンヤの曲が好きなため、エンヤ本人が出演しているのには、驚いた。最近こそ、エンヤ人気も落ち着いてはいるものの、いまだにエンヤは世界中でも人気がある。

ヒーリングミュージックの代表で、世界的なディーヴァでもあるエンヤが出演する音楽番組なんて、今現在の日本のテレビ業界では、「SONG TO SOUL」以外に存在しないのではあるまいか?

エンヤの生家はアイルランドの片田舎にあるパブなのだが、その生家にまでわざわざスタッフが訪ねて行って、エンヤの音楽がどのような環境で、どのようにして生まれたかを丁寧な取材ロケを通じて解き明かし、彼女の音楽のルーツをアイルランドの美しい景色とともに紹介する。

なんとも、贅沢な作りの番組だ。

てゆーか、テレビ業界って、構造不況業種じゃなかったっけ?

よくも、こんなに取材ロケに金をかけることができるもんだ、と私などは、毎回、感心して見ているんだが。

 

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過剰な演出を排した番組作りと秀逸なナレーション

 

さらに、この番組のもう一つの魅力を挙げるとすると、それは、過剰な演出を一切排除していることだ。

これが、他の番組だと、ついつい過剰な演出をしてしまうものだ。

たとえば、

その時、奇跡は起こった!!!

とか、

この1曲で、バンドの人生は大きく変わった!!!

とか、やはり、見せ場を作って盛り上げようとするんだろうなあ。

それは、番組が単調にならないように、視聴者を飽きさせないようにするための演出家の腕の見せ所なのかもしれないが、しかし、それがツボにはまらないと、かえって、視聴者はしらけるものだ。

「SONG TO SOUL」は、そのような過剰な演出は一切なく、淡々と番組が進められてゆく。悪く言えば、番組に抑揚がなく単調なのだが、しかし、このプレーンな演出が、秀逸なナレーションとあいまって、この番組自体に一種のヒーリングミュージックを聞いているかのような心地よさを覚えるものなのだ。

それで、このナレーションを担当しているのが、なんと、

磯部弘!!

ん? 磯部弘って誰?

みなさんは、良く知らないでしょう。私も、ぜんぜん知らない人だ。

なんでも、劇団時代は柴田恭平などとも共演していた俳優さんらしいのだが。そっち方面の知識が全くない私などは、名前を聞いても分からない。

しかし、そこはやはり、俳優だけあって声がいい。JET STREAMの城達也ほどの美声の持ち主ではないが、磯部弘の声も素敵だ。

磯部の声も、しょっちゅうどこかで耳にするのだが、どこで耳にしたのか覚えていない。まあ、声優というものは、そういうものだ。

名前を聞いても、顔を見ても分からないのに、声を聞けば、「ああ、この声の人ね」とすぐに認識する。

「SONG TO SOUL」は、磯部弘の声の独特なトーンと、過剰な演出を排除した番組作りが絶妙にマッチした近年まれに見る傑作番組だと思う。次々にヒットチャート形式で曲を紹介するありきたりの音楽番組とは一線を画し、あくまでも名曲と呼ばれる1曲の誕生秘話に焦点を当てた音楽番組である。

秀逸なナレーションと過剰な演出を排除したこの番組を見ていると、まるでヒーリングミュージックを聞いているかのような安らかな感覚になる。見終わった後、穏やかな気持ちになれるこんな番組の方が、私のようなアラフィフ世代にはうれしい。落ち着いた大人の番組と言える。

「SONG TO SOUL」は、毎週日曜日夜11時から放送している。