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ザ・ビーチ・ボーイズ「ココモ」:「じゃないメンバー」たちが制作したバンド史上最大のヒット曲

 

本日は、ビーチボーイズの「ココモ」を取り上げます。

ビーチボーイズのヒット曲は? 

と問われれば、我々アラフィフ世代が真っ先に思い浮かべるのは「ココモ」でしょう。これに関しては、異論はないと思うんだ。

しかし、私よりも10年、20年くらい上の世代、つまり、アラ還(カン)世代やアラ古希(コキ)世代なんかだと、ビーチボーイズのヒット曲として、「サーフィンUSA」、「ファン・ファン・ファン」、「グッド・ヴァイブレーション」などを挙げるんだろうなあ。

これは、活動歴が長いバンドにはよくある現象だ。

 

たとえば、分かりやすく日本での例を挙げると。

我々のようなアラフィフ世代で、ササン・オールスターズの名曲と言えば、真っ先に「いとしのエリー」を挙げるだろう。

しかし、今の若い人であれば、「TSUNAMI」などを挙げるんじゃないかなあ。

ヒット曲などというのは、やはり、青春の思い出と結びついていることが多いから、その曲が一番印象に残っている、一番多感な時期のヒット曲を真っ先に思い出すことになるんだろうね。

ということで、ビーチボーイズのヒット曲と言えば、我々アラフィフ世代にとっては、やはり、「ココモ」が真っ先に挙がってくることになる。

 

しかし、私がビーチボーイズの「ココモ」を取り上げた理由は、我々の世代に馴染みのあるヒット曲だから、というだけではない。

なぜ、この曲を取り上げたか?

それは、この曲が、ビーチボーイズの「じゃないメンバー」によって制作されたにもかかわらず、それまでビーチボーイズが発表した数々のヒット曲を上回るほどの売り上げを記録したからだ。

 

世の中にあまた存在するグループやコンビには、ほとんどの場合、中核となる人物と、「その他」がいるものだ。

たとえば、分かりやすい例を挙げると。

「ビートたけし」と、ビートたけし「じゃない方」。

一方は、お笑い芸人としても一時は天下をとったし、今では芸人の枠を超えて世界的な映画監督なのだが、もう一方は、・・・・。

「ビートきよし」って、今何してるんだろう?

グーグルで、「ビートきよし」の今を調べるのもシンドイくらい、存在感がない。だいいち、「ビートきよし」を、今現在、グーグルで検索するヤツはいないでしょう。

めんどくさいので、私も調べるのはヤメにした。「ビートきよし」に興味のある方は、各自調べてください。

 

その他の例を挙げるとすると、

お笑い芸人の「バイキング」の小峠と、小峠「じゃない方」、チェッカーズのフミヤと、フミヤ「じゃないメンバー」みたいな?

そういったコンビ内格差、グループ内格差というのは、どうしても生じてしまう。一人あるいは二人だけ人気が出て、後のメンバーは中核メンバーの陰にかすれてしまう。

 

ビートルズなんかもそうだよね。

ビートルズは、極論すれば、ポール・マッカートニーとジョン・レノンの二人がいれば成り立つバンドだ。

しかし、この二人の仲が悪かったため解散した。というか、ビートルズとしてやっていくことは不可能になった。

これが、例えば、ポール・マッカートニーとジョン・レノンの仲が強固で、彼ら以外の「じゃないメンバー」との仲が悪いのであれば、ジョンとポールは「じゃないメンバー」とたもとを分かち、新生ビートルズとして活動を続けていくことができたのかもしれない。

 

こんな例は、日本にもある。今でも伝説のバンドとして邦楽史にその名を刻んでいる「BOOWY(ボウイ)」が、それだ。

BOOWY(ボウイ)の場合も、中核メンバーである氷室京介と布袋寅泰の仲たがいが原因で解散したと言われている。

ビートルズにしても、BOOWY(ボウイ)にしても、中核メンバーがうまくやりさえすれば、バンドが続けられたのに。惜しいことだ。

両雄並び立たず、ということか。

 

それで、肝心のビーチボーイズに関してだが。

ビーチボーイズは、もともと、ウィルソン兄弟とその従兄弟と友達という仲良し5人組が結成したバンドだ。

そして、ビーチボーイズのヒット曲の多くは、マイク・ラヴが作詞し、ブライアンが作曲するという形態をとっていた。

しかし、ブライアンは作曲のみならず、楽曲全体のプロデュースを担当するなど、名実ともにビーチボーイズの顔と言ってもいいほどの中核的な存在だった。

ブライアンと言えばビーチボーイズであり、ビーチボーイズと言えばブライアンというふうに。

だから、ビーチボーイズは、ブライアンと、ブライアン「じゃないメンバー」に分けられる。

 

それで、最初はビーチボーイズもうまく行っていたのだが、次第にブライアンが精神疾患にかかり、酒とドラッグに溺れ、曲作りもロクにできなくなってきた。

なぜ、ブライアンがこんな状態になったかというと、一つにはビートルズの存在が挙げられる。ビートルズのことをライバル視していたブライアンが、彼らに対抗して制作したアルバムが、ほとんど評価されずに失敗してしまった。

ブライアンの頭がオカシクなったのは、そのアルバムの失敗がきっかけだと言われている。

それ以後、ビーチボーイズは低迷期を迎える。アルバムを制作しても高い評価を受けることはなく、曲のセールスも振るわない。

一応、ビーチボーイズとして活動は続けているものの、肝心のブライアンが相変わらず精神的に不安定な状態には変わりがない。

それで、最終的に、ブライアンがソロ活動を行うために、ビーチボーイズを脱退する。

 

その時、ブライアン「じゃないメンバー」たちが集まって制作した曲が、「ココモ」だ。

1988年に発表された「ココモ」は、大ヒットを記録する。そして、ビーチボーイズ史上最大のヒット曲となった。

これまで、ブライアン率いるビーチボーイズは数々のヒット曲を世に送り出してきたし、そのことで、ビーチボーイズとはブライアンであり、ブライアンとはビーチボーイズでありえたのだが、ブライアン脱退後のビーチボーイズが、それまでのヒット曲以上のヒット曲を生み出すことになったのは、ブライアンにとってあまりにも残酷な現実であったに違いない。

 

たとえば、こういうことを考えると分かりやすい。

サザンオールスターズと言えば桑田佳祐であり、桑田と言えばサザンだ。これには、みなさんも異論はないでしょう。

それで、もし、その桑田がサザンを脱退したら、どうなるだろう?

原由子の声は素敵だが、でも、原由子でサザンが成り立つわけがない。

 

 

しかし、もし、桑田脱退後の原由子率いるサザンが制作した曲が、それまで桑田が制作したどの曲よりもヒットしてセールス記録を塗り替えたらどうなるだろうか?

いったい、桑田が背負っていたサザンとは何だったんだろうか?

とみなが思うだろう。

 

ビーチボーイズが、まさにそれだ。

名実ともにビーチボーイズの顔だったブライアンが脱退したのち、「じゃないメンバー」たちが制作した曲(「ココモ」)がビーチボーイズ史上最大のヒット曲となった。

何とも、皮肉な結果になったものだが。

 

ただし、「ココモ」のヒットには、幸運な要素もあった。

それは、トムクルーズ主演の映画「カクテル」の挿入歌として使われたことだ。当時のトムクルーズは、まさにアイドル並みの人気を誇り、映画自体も単なるアイドル映画としか言えないクソ映画だったのだが。

 

 

しかし、アイドルであったトムクルーズの人気と、カクテル作りの派手なパフォーマンスが受け、映画は大ヒットとなる。当時の日本でも、シェイカーを宙に放り投げたり、ジンの瓶を空中で回転させながらカクテルを作る派手なパフォーマンスが流行ったりしたものだ。

そういえば、最近、そんなパフォーマンスのカクテル作りなどは目にすることはないが、あれは、もうやっていないんだろうか?

 

とにかく、トムクルーズ主演の映画の人気につられる形で、挿入歌の「ココモ」も全米ナンバー1となった。

「ココモ」の大ヒットの裏には、そんな事情もあった。

 

後年、ブライアンは、インタビューでこう答えている。

「ぼくは、もうビーチボーイズじゃないんだよ」と。

寂しげに答えるブライアンの胸に、「ココモ」はどのように聞こえているのだろうか?