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東芝株の投資戦略と、東芝再建に関する一考察

 

東芝の再建策が迷走を極めている、まさに、そんな時。

旧村上ファンドを運営していた村上世彰が、「今の東芝株は買いだ」と、雑誌(週刊東洋経済6月24日号)の対談で発言している。

村上と言えば、かつて村上ファンドを率い、もの言う株主として名だたる企業の株を買い占めて経営者を震え上がらせたのだが。

インサイダー取引容疑で逮捕され、その後ファンドは解散。一時はシンガポールに移住し、株式投資とは無縁の生活を送っているように見えた。

 

ところが、今年の4月に、旧村上ファンド関係者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、突如、東芝株を約10%買占め、筆頭株主に躍り出る。

村上本人は、ほとぼりが冷めた頃から徐々に投資活動を再開し、今年の6月には自著「生涯投資家」を発表。

その著書の刊行に合わせて週刊東洋経済のインタビューに答えた中で、村上自身が「今の東芝株は買いだ」と、発言したのだ。

 

なんだか、怪しいよねえ。

旧村上ファンドの関係者、つまり、かつての部下たちが筆頭株主になっている東芝株を、村上は「買いだ」としているわけでしょ?

どう見ても、一般投資家を煽って、東芝株の価格を吊り上げ、エフィッシモの保有株を高値で売り抜けようという魂胆であるようにしか見えないんだが。

 

それもそのはず。

村上は、これまでに何度も一般投資家を利用して儲けてきたからだ。

かつて、村上が運用していた村上ファンドは、多額の現金や優良資産を保有して有効活用していない会社の株を買い占め、経営陣に対して、株主提案を通じて企業価値の向上を求め、株主軽視の経営者に対しては激烈な批判を行うなど、もの言う株主として積極的に株主の立場に立った活動を行っていた。

この村上の行動は、株主のことなど眼中にない経営者からは、大いに不評だったのだが。

しかし、村上がとってきた行動は、本来株主として正しい行動であり、称賛されるべきものだ。

日本の場合、機関投資家が大量の株を保有しながらも、保有先の企業に対して、これまで、企業価値の向上など求めてこなかったし、だからこそ、経営者側も、株主をなめきったような態度でいることが多かった。

村上の登場は、本来ならば、積極的にもの言う株主として行動しなければいけないにもかかわらず、なにもしてこなかった機関投資家に対する強烈な皮肉であり、日本経済にとっても歓迎すべきものだった。

 

ところが、だ。

村上が株を買い占めた企業に対して、役員派遣などの株主提案を行って、企業価値の向上を求めるのは、正しいことであり、評価できることだったのだが。

しかし、村上の投資行動自体に問題があった。

というのは、村上が株主提案を行うと、当然、企業側から配当増額とか、合併などの話が出るのではないかという憶測が流れ、それにつれて株価も急騰する。

そこで、村上ファンドは保有株を高値で売り抜けたのだ。

つまり、村上ファンドというのは、企業価値の向上を企業に求めるなどと大義名分を掲げながら、株が急騰すれば、さっさと売り抜けるという行動を繰り返していただけであった。

 

長期的に企業価値の向上を求めるのではなく、村上ファンドが企業側に対して企業価値の向上を求めることで、一般投資家が釣られて株を購入し始めると、それにぶつけて、株を売り抜けた。

ようするに、村上ファンドにとって、企業価値向上というのは、一般投資家に向けた宣伝であり、株価が急騰すれば、さっさと売り逃げて、あとは知らんぷり。

高値で買った一般投資家が泣きをみる結果となる。

おそらく、村上は企業価値が実際に向上するかどうかには、関心がなかったに違いない。会社に対して企業価値向上を求めることで株価を上げることにしか、関心がなかったのだろう。

 

今回、村上が、「今の東芝株は買い」と言った発言の裏には、おそらく、東芝株の価格をつり上げて、旧村上ファンド関係者が設立したエフィッシモの保有株を売り抜けさせようという魂胆があるものと、私などは思ったものだ。

 

それでは、東芝株は買えないのか?

となると。

いや、そうでもない。

村上の魂胆は別にして、虚心坦懐に東芝の置かれた現状を見てみよう。

 

現在、東芝が半導体子会社の売却話を進めているのは、周知のとおりだ。ただ、合弁相手のウェスタン・デジタル(WD)が嫌がらせをして売却差し止めを提訴しているから、少々話がややこしい。

しかし、すでに、売却先もほぼ確定し、売却金額も2兆円になるということが報道されている。

それゆえ、最終的に、WDの提訴が無効化され、無事、半導体子会社の売却が進むと、現在東芝が抱える損失が一掃されることになる。

ということは、半導体子会社売却話が予定通り完遂すれば、東芝は、一躍、キャッシュリッチな企業に生まれ変わる。

おそらく、そうなれば、東芝株は急騰するだろう。

なぜならば、現在、東芝株は上場廃止になるとかもしれないというマスコミ報道により、安く買いたたかれているからだ(7月14日金曜日の終値231円)。

ただし、これは、半導体子会社の売却がうまく行くことを前提にしている。

 

そういう意味では、売却話がうまく行くという前提で、今現在の東芝株を購入しておくのも一つの投資としては、あり得るのだ。

ただ、半導体子会社を売却してしまうと、東芝には、もう、カスしか残らない。めぼしい事業は皆無になる。これで、かつての東芝のような企業を再建するのは無理だ。

だから、東芝株の投資行動としては、今の安値を拾っておき、売却話が決まり、急騰したらすぐに売り抜けるという投資行動がいいだろう。

おそらく、筆頭株主のエフィッシモも売ってくるだろうから、モタモタしていると、せっかくのチャンスを逃してしまう。

急騰したら、すぐに売り抜けるという短期決戦であれば、東芝株への投資は、あながち悪いものではない。

 

ところで、そもそも、東芝は、なぜ、半導体子会社やメディカルなど有力な事業を売却せざるを得ないのか?

そんな有力な子会社を売却した後、カスしか残っていない東芝の再建は、まず、不可能だ。

不可能だと分かっているにもかかわらず、なぜ、無理をして有力子会社を売却するのか?

おそらく、一般の人が抱いている疑問は、この点であろう。

 

有力子会社を売却するのは、つまり、東芝が上場を維持するために他ならない。すでに債務超過状態の東芝は、2期連続の債務超過となれば、有無を言わさず、上場廃止になる。

上場廃止になれば、東芝株を保有している機関投資家や金融機関が、多額の損失を計上しなければいけない。それは、おそらく、かなり大きな規模での悪影響を日本経済全体に及ぼす。

それゆえ、東芝株が上場廃止になるのは好ましくない。

これが、東芝が上場を維持しなければならない事情なのだが。

 

しかし、だよ。

有力な子会社を売却したあとの東芝には、カスしか残らない。とすれば、とてもではないが、東芝は再建などできるわけがない。

半導体子会社を売却して、一時的にキャッシュリッチになったとしても、そんな金は、すぐに消えてしまう。

とすれば、半導体子会社売却後の東芝には、最終的には、倒産しかない。

ゆっくりとゆっくりと、死んでゆく。

緩慢な死。

それが、有力子会社を売り払った東芝の未来図だ。

 

本来、企業の再建は、有力事業を残し、そこに経営資源をつぎ込むことで、事業の選択と集中を進めるのが常套手段なのだ。

東芝のように、有力事業を売り払ってカスばかりを残したら、再建などできるはずがないではないか。

東芝は選択を誤った。

上場にこだわるあまり、再建の夢を捨て去ってしまったのだ。

 

東芝の再建には、例えば、LBO(レバレッジド・バイアウト)が有効だったのだろうと思う。

LBOというのは、買収先の資産やキャッシュフローなどを担保に資金を調達し、買収を行うことを言う。

東芝の半導体子会社の価値は2兆円と言われている。一方、現在の東芝の時価総額は1兆円に過ぎない。

とすれば、東芝経営陣は、半導体子会社を担保に2兆円まで資金を借り入れて、東芝の株を買い占め、東芝を非上場にする。

非上場にしたら、うるさいことを言う株主はいなくなるため、経営の自由度が大幅に高まる。

そうなったら、半導体子会社やメディカルなどの有力事業を中核に据え、経営資源をそこに集中させ、ほかの周辺事業は売り払う。

そして、うまく事業が軌道に乗ったら、再上場すればよかったのだ。

東芝は、多方面からの圧力に屈してしまい、有力事業を切り売りして上場を維持するという、最悪の選択をしてしまった。

そんな、東芝には、半導体子会社の売却がうまく行ったとしても、もはや未来はない。